ランドセルで多様性を思う思う

ランドセル、何色でしたか?
 私は赤でした。迷うこともなければ、他の選択肢もなく、もっと言うならランドセルの色への疑問すらありませんでした。赤と黒の2色。女の子は赤、男の子は黒が常識という時代でした。ピンクがかった赤のランドセルや、差し色の入った黒のランドセルの子などがいたら、ちょっと物珍しくて目立ったり、羨望の目を向けられたりしていた記憶があります。田舎だったせいもあるのでしょう。
 与えられたランドセルを背負わなくなり、意識にも上らないような生活をしているうち、今度は買う側として意識をするようになりました。ちまたで囁かれるラン活というやつです。いつの間にか色が豊富になって、水色や青のランドセルを女の子が背負っていたりするのを見かけるようになり、いい時代になったなと感じます。自分が今幼稚園の年長さんだったら、わくわくが止まらないことでしょう。色んなブランドとたくさんの色の中から1つを選ぶ自由さはかえって大変なことなのかもしれませんが、それよりもまず、色の選択肢とジェンダーが解離し始めたことに対して、よいことだと感じています。
 ただ、性別と色をわけることが難しい例はありますし、もう世の中の共通認識として動かせないものもあるとも思います。最たる例は、浴場や公衆トイレの男女の区別などでしょうか。新しい商業施設などではトイレのマークに色を付けていないところも時々見かけます。でも、色の情報は形よりも認識がスムーズでしょうから、この先変わらないか、変わるとしても何年も先になるのかもしれないな、などと考えたりします。
 そして、「いい時代になったな」と思ってはいても、その性別らしい色というものは刷り込まれていてなかなか削ぎ落すことが難しい、とも感じています。男の子は青や緑や黒、女の子は赤やピンクや淡い色……三つ子の魂百までですね。我が子(男児)が赤いハート柄の靴下を買ってと言ったり、ランドセルは赤がいいと言ったりした時、つい水色のハート柄を勧めたり黒字に赤いラインのあるランドセルを見せたりしてしまいました。レンジャーものの主役は昔からみんな赤だろうに、不意をついて出る判断は古いまま更新されていないようです。
 色とジェンダー、まだ切り離すことができない部分もあれば、解放されてそれぞれが好きな色を選べるようになった部分もあり、過渡期にいるのだなぁと感じるこの頃でした。